デジタル刺しゅうミシン/刺しゅうPROを使ってオリジナルTシャツを作る

こんにちは!
ファブテラスいわてスタッフの猪股です。

先日、ふと思い立ち、ファブテラスいわてのデジタル工作機器の一つである「デジタル刺繍ミシン」を使ってオリジナルTシャツを作ろうと思いました。

今回、初めての方にも興味を持っていただきたくて大ボリュームの記事となっています。
分かりやすいように目次を付けました。
興味を持つきっかけや、参考になれば嬉しいです!

作りたいもの

私が今回作ろうと思っているのは、胸部分にワンポイントとしてエビフライの絵があるTシャツです。
このワンポイントのエビフライを刺しゅうで作ろうと思っています。

イメージとしてはこんな感じです。

イメージイラスト

使用する機材・ソフトウェア

brother 刺しゅう用ミシン イノヴィスNX2700D

ファブテラスいわてで貸し出しをしているデジタル工作機器の中の一つ「デジタル刺しゅうミシン」です。

こちらは、PCを使って作成した刺しゅうデータを読み込ませると、
自動で糸の色や縫い方などを判別しながら絵柄を刺繍してくれる便利なミシンです。

人の手で行う刺しゅうと比べて格段に早く仕上げてくれます。

brother PC刺しゅうデータ作成ソフトウェア 
刺しゅうPRO10

上記のデジタル刺しゅうミシン用のデータを作るために使用するのが、こちらの「刺しゅうPRO 10」という専用のソフトウェアです。

刺しゅうしたい絵柄や図柄、糸の色や縫い方などの設定はこのソフトウェアを使って事前に指定しておきます。

ファブテラスいわてでは、設置PCにてこちらのソフトもお使い頂けます。

Adobe illustrator

刺しゅう用のデータは、刺しゅうPRO 10だけでも作成出来るのですが
イラストなどは細かい部分の編集が難しいので「Adobe illustrator」というドロー系のソフトウェアを使用していきます。

これは、ロゴやアイコンなどのはっきりした線で描かれるイラストを作成するのに向いているソフトです。

ファブテラスいわてに設置してあるPCであればこちらのソフトの利用も可能です。

ここではillustratorを紹介していますが、svg形式での出力が可能なソフトであれば刺しゅうPROでの読み込みが可能です。
(中には上手く行かない場合もあります)

ミシンやミシン用ソフトについてのさらに詳しい製品情報やスペックについては、brotherの公式サイトに掲載されているのでそちらをご覧ください。

▼brother 刺しゅう用ミシン イノヴィスNX2700D
https://www.brother.co.jp/product/hsm/embropc/nx2700d/index.aspx
▼brother PC刺しゅうデータ作成ソフトウェア 刺しゅうPRO10
https://www.brother.co.jp/product/hsm/embropc/shishu_pro_10/index.aspx

デジタル刺しゅうミシンを使うメリット

実はデジタル刺しゅうミシンにはたくさんのメリットがあります。

————————————————————————

  1. 刺しゅうが出来上がるのが早い
  2. 何度も簡単にやり直せる
  3. 実際に作りながら理想の仕上がりになるまで調整できる
  4. 操作(使い方)が簡単
  5. 写真やイラストなども簡単に刺しゅうできる

————————————————————————

実は私、小学生の時ミシンが使えなすぎて家庭科が嫌いになった内の一人なのですが、
このミシンは、針に糸を通す面倒な作業が簡略化されていたり、勝手に縫ったりしてくれます。

手先が器用でなくても、ミシンを使うことや縫い物、編み物が苦手でも使いやすく、
簡単に刺しゅうが出来てしまう優れものなのです。

ちなみにデメリットは、激しく動くので「無事に完成するかちょっと不安」なことです。

刺しゅうまでの流れ

デジタル刺しゅうミシンで刺しゅうするまでの一連の流れを紹介します。

————————————————————————

  1. illustratorでエビフライのイラストを作る
  2. 作ったイラストをsvg形式で保存する
  3. 刺しゅうPRO 10に作成したsvgデータ(エビフライ)を読み込む
  4. 糸色/糸密度/縫い方などの設定をする
  5. 刺しゅう用データをUSBに書き出す
  6. USBからデジタル刺しゅうミシンにデータを読み込む
  7. 布を刺しゅう枠にセットする
  8. ミシンに刺しゅう枠(布付き)をセットする
  9. 大きさ/開始位置などの微調整を行う
  10. 糸をセットする
  11. スタートボタンを押して刺しゅうを開始する

————————————————————————

今回はsvgデータを使うので、このような流れで刺しゅうしていきます。
やり方は変わりますが、svgの他にもpngやjpgなどの画像データを使うこともできます。

始めは工程が多く感じたり、ソフトを触るのが難しそうと感じるかもしれませんが大丈夫です。
慣れもありますが、工程数が多いだけでやっていること自体は簡単です◎

また、ファブテラスいわてでは初回講習があるので、初めての方にはスタッフが使い方をレクチャーします!
初回以外の利用時でも何か不明な点があれば、スタッフにお声がけ頂ければ一緒に解決していきます。

svgデータの作成

それでは早速作っていこうと思います。

まず始めにillustratorを使って、エビフライのイラスト(svgデータ)を作成していきます。

illustratorでの作成画面

茄子っぽい形とハートのような形を組み合わせただけの簡単なイラストでエビフライを表現してみました。

刺しゅうをする際は、あまり複雑ではない絵柄の方が綺麗に刺しゅうが出来ます。
細かすぎると再現が難しくなり、上手く行かない可能性が高いです)

svgとして保存

実際の画面

イラストが出来たら、svgデータとして保存します。
画面の左上にある[ファイル]から
[別名で保存]
→ [ファイル形式] → svg を選択
→ [保存]

【※注意※】

illustratorは[書き出し]からもsvgデータを書き出すことが出来るのですが、
[書き出し]から書き出すと、刺しゅうPROで「一部のデータが正しく変換されませんでした」というエラーが出てしまい、
うまく読み込めない場合があります。

書き出す際は[別名で保存]から書き出しましょう!

svgオプションの画面

すると、[svgオプション]というウィンドウが開くので、

中間あたりにある[詳細オプション]を変更していきます。
[詳細オプション]内のCSSプロパティから
[プレゼンテーション属性]を選択して、[OK]

これでSVG形式でのデータの書き出しが完了しました!

【※注意※】

cssプロパティを変更する際は[スタイル〜]以外を選択します。
ここが[スタイル〜]以外のものになっていないと、色の情報が上手く変換できず、
真っ黒に塗りつぶされたデータとして読み込まれてしまう場合があります。

刺しゅうPRO 10でsvgデータを読み込む

svgデータが出来たら、刺しゅうPROを起動して作成したデータを読み込みます。

刺しゅうPRO 10を起動

起動後の画面

起動するとこのような画面が開きます。

上に表示されている[ホーム]の中にある、[データ取り込み]→[ベクトル画像ファイル]を選択します。
そこで、先ほど保存したsvgデータを選択すると…

データ取り込み

刺しゅうデータとして読み込まれたエビフライ

こんな感じで読み込まれました!

少し小さくて見辛いかもしれませんが、
既に刺しゅうっぽく糸のような質感となって表示されています。

illustratorで塗っていた色もバッチリ認識・再現出来ていますね◎

刺しゅうデータを編集(調整)する

試しに一度、このままのデータでハンカチに刺しゅうしてみました。
いきなり本番だと失敗が怖いので、刺しゅうする際は端切れなどの布を使って試してみることをおすすめします◎

糸密度4.0本/mmのぬい方設定画面
糸密度4.0本/mmで刺しゅうしたエビフライ

刺しゅうしてみると、

なんだかガビガビしていて隙間が目立ちます。
エビフライの尻尾部分の形が歪になっているのも気になる…

[糸密度]を見てみると、デフォルトの「4.0本/mm」になっていました。
下にあるプレビュー画面でも若干隙間が広いのが確認できます。

そこで、この[糸密度]を上げてガビガビの改善を目指そうと思います。

糸密度6.0本/mmのぬい方設定画面
糸密度6.0本/mmで刺しゅうしたエビフライ

[糸密度]
「4.0本/mm」から「6.0本/mm」に変更してみました。

プレビュー部分を見ると、先ほどの物よりも隙間が小さくなっています。

これはかなり期待できそう!!

実際に端切れに刺繍してみると、かなりいい感じに!!
糸と糸の間に隙間も無いですし、エビフライの尻尾も綺麗な形で出来ています!

これで刺しゅう用データの調整は終わりです。
実際に作って、仕上がりを確認後に調整できるのもデジタルならではの強みですね。

今回は糸密度のみ変更しましたが、他にも刺しゅう自体の大きさや糸の色、縫い方などを変更できます◎

刺しゅうデータを書き出す/ミシンに読み込ませる

データの調整が出来たら刺しゅうデータを書き出します。
刺しゅう用のミシンにデータを読み込ませる際にはUSBを使用します。

書き出し画面

まずPCにUSBをセットしたら、刺しゅうPROのホーム画面から[データ出力]を選択し、[USBメモリー]→[H:]を順に選択していきます。

書き出しが終わったら、PCに挿していたUSBをミシンに挿入していきます。
刺しゅう用ミシンには電源ボタンの横にUSBポートがついているのでそこを使います。

ミシンの電源を付けると、最初の画面右下にUSBのマークが描かれたボタンがあるので、そこを押すとUSB内のデータが読み込まれます。

布(Tシャツ)の準備

データの準備が終わったので、次は刺しゅうしていく布(Tシャツ)を準備します。

家にあったてきとうな無地の白Tシャツを持ってきました。

家にあったてきとうなTシャツ

私は小心者なので、刺しゅうする時にワンポイントが変な位置に来たりしないように
実際に着用しながら、この辺にあったらいいな〜と思う位置を確認します。

チャコペンで印付け

大体の位置がわかったら、
先ほど試しに刺しゅうしてみた端切れを使いながらエビフライの大きさを確認し、エビフライが収まるくらいの印をチャコペンでつけていきます。


これは、刺しゅう枠をはめる時に位置が分からなくなってしまうので目印として付けています。

実は先日ファブテラスいわての作業台が大きくなったのですが、
こうしてTシャツを広げて作業する時、とてもやりやすくなっているので是非活用してください◎
(チャコペンや定規も貸し出し可能です!)

印がつけれたら、刺しゅう枠をはめて行きます

ファブテラスいわてにある刺しゅう枠は4種類。
素材の大きさや刺しゅうの大きさに合わせて選ぶことが出来ます。

今回はワンポイントなので、その中でも一番小さいものを使っていきます。

4種類の刺しゅう枠

布がピンと張るように気をつけながらはめていきます。

Tシャツに刺しゅうする時の注意点ですが、
表側だけを縫いたいので、後側の布を一緒に枠にはめないように気をつけましょう。

Tシャツに刺しゅう枠をはめた様子
裏側はこんな感じです

これで布(Tシャツ)の準備は完了です!

布と糸をセットする

それでは刺しゅう用のミシンに、先ほど用意した布(Tシャツ)と使うミシン糸をセットしていきます。

ミシンにTシャツをセットした様子

ちなみに、ファブテラスいわてでは、ミシン糸の色がかなり充実しています。
利用時にはこちらも無料で利用出来ますので、ぜひ活用してください◎

ファブテラスいわてにある糸たち
今回使う糸

今回はエビフライの衣部分を208番、しっぽの部分を800番で刺しゅうしていこうと思います。

実は端切れに刺しゅうしていた時に、衣部分の糸の色を変えて、
どの色(208番, 214番, 328番)が一番いいのかを模索していました。

何度も同じ絵柄を簡単に刺しゅう出来るのもこのミシンの魅力の一つです。

ミシンで縫っていく

それでは準備が完了したので、実際に縫っていきましょう!

ミシンの画面では、このように使う糸の色や、各糸色を使って縫う時間などが表示されています。
エビフライは2、3分で出来ちゃうらしいです。すごいですね。

押さえを下ろし、スタートボタンを押すと開始します。

いざ!!!!!!!!

スタートボタンを押す猪股
いい感じに刺しゅうされていくTシャツ

最初は順調だったものの、様子がおかしくなり始めたので即座に止めました。

くしゃくしゃになったエビフライ

恐らくTシャツの生地が柔らかく、薄すぎたのが原因だと思いますが、
刺しゅうする際の上下左右の移動に耐えられず、刺しゅうがズレて歪んでしまいました。

無残にも穴が空いたTシャツ

さらにさらに、
硬めのTシャツを買い直すか悩みながら気合で糸を解いていたところ、
大雑把な性格ゆえ、ハサミで布まで切ってしまい、穴が開いてしまいました!

折角まだ使えるTシャツだったのに、このまま捨てるのは惜しいので
ワッペンを作って上から貼ることにしました!

ワッペンを作る

そうと決まれば早速、最寄りのダイソーに駆け込みました。

私の計画をご説明します。

まず、洗濯機で普通に洗濯したいので、洗えるフェルトを用意します。
フェルトに刺しゅうを施しエビフライの形に切ったものに、アイロンでくっつく両面接着シートを貼ります。
こうして作ったワッペンをアイロンでTシャツに貼ります。

これで完璧なオリジナルTシャツが完成するはずです。

しかし、現実とは時には非情です。

最寄りのダイソーに両面の接着シートが無く、フェルトも「手洗いフェルト」という事実。
フェルトは我慢するとして、接着シートの代わりには布用接着剤を使うことにしました。

実物がこちら。

ワッペン作りに使うものたち

フェルトを開封すると、今まで丸まっていたので変な筋が入ってしまっています。

クルックルのフェルト
アイロン掛けをする猪股
アイロンで綺麗にしたフェルト(黄)と
アイロン掛け前のフェルト(白)

実はファブテラスいわて、アイロンもアイロン台も常備してあるのです。(貸し出し可)
アイロンで大事な土台となるフェルトを伸ばしていきます。

アイロン作業も広い作業台で出来るので快適でした。

今度は刺しゅう枠にフェルトをセットして、
いざ!!!!尋常に勝負!!!!!!!!

刺しゅう枠にセットされたフェルト
再度スタートボタンを押す猪股

成功しました。

最終決戦・ワッペンを貼る

フェルトをエビフライの形で切り抜いて、裏側に布用接着剤をつけていきます。

接着剤を塗られていくエビフライ

裏側の説明書きを見ると、直接出さずに別のものに一定量出して
それを指で伸ばしていくのが正しいやり方みたいです。

塗り終わった後の指は、木工用ボンドが指についた時みたいにカピカピでした。

関係ないですが、刺しゅうの裏面も綺麗ですよね。
流石です。

ちなみに、この布用接着剤は「一度乾いてくっついたら剥がれない」らしいです。
気をつけなければ。

それでは穴が隠れるように貼っていきます。

ソイヤ!!!!!!!!!!!!!!!!!

くっついたエビフライ

おお〜〜〜!!!!!!!!!
綺麗に出来ました。

あとは接着剤が乾くのを待って完了です!

待っている間、若干エビフライが直立していて気になったので、
ナナメに直そうとしましたが、既にカチカチに固まっていて直せませんでした。

私は小さいことは気にしません。直立エビフライでいいでしょう。

Tシャツが歴戦の戦いを受けてくしゃくしゃになっていたので、
ついでにアイロンをかけて綺麗にしてみました。

アイロンでプレスされるTシャツとエビフライ

完成

やっと完成です!!!!!!!!!!!!
長い戦いでした!!!!!!!!!!!!!!!

折角なので着てみました。

とてもいい感じですね!
この夏、エビフライTシャツを愛用していきたいと思います!

後日談

めんどくさがりな私猪股、Tシャツをこれだけ手洗いするはずもなく、
洗濯機で洗ってみました。

おお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!

全然剥がれていません!
が、ほんの少し、若干フェルトが毛羽立って、モケモケしています。
何度か洗濯したら更にモケモケしだすかもしれませんが、その時はその時です。
今後も洗濯機で洗おうと思います。

ネットに入れたらもっとモケモケが少なくなるかもしれませんね。

デジタル刺しゅうミシンでの制作時のコツ(まとめ)

ここまで長々とオリジナルTシャツの制作過程〜完成までを書いてきましたが、
最後に要点だけまとめてしまいたいと思います。

————————————————————————

  1. 刺しゅうする時は簡単な絵柄の方が上手く行きやすい
  2. illustratorで作ったsvgデータは[別名で保存]から書き出す
  3. svgで書き出す際にはcssプロパティを[プレゼンテーション属性]にする
  4. 刺しゅうする生地はハリがあって厚め(綿やフェルトなど)なものがオススメ
  5. 本番の布に刺しゅうする前に端切れで練習しておくと、本番がより綺麗に出来る

————————————————————————

以上です。

蛇足ですが、ファブテラスいわてで作業するともれなく
刺しゅうミシン・刺しゅうミシン用ソフトウェア・illustrator・カラフルなミシン糸・アイロン・チャコペン・定規・広めの作業台など制作に必要なものが無料で利用できます。

刺しゅうミシンを使ったミニワークショップ開催!(終了)

また、今週末 2021/6/27(日) には 本日ご紹介したデジタル刺しゅうミシンを使ったワークショップを行います。
興味のある方はぜひいらしてください!

【イベント詳細】
「オリジナルハンカチを作ろう!」

日時:2021年6月27日(日)
   10:00~16:00
場所:アイーナ3F ファブテラスいわて
所要時間:30分〜1時間程度
事前予約不要
参加料:無料

対象年齢:小学生以上

第3回ワークショップ「オリジナルハンカチを作ろう!」は終了いたしました。(2021.6.27現在)

ミシンや3Dプリンタ、レーザーカッターなどを使ったワークショップを毎月企画していますので、是非チェックしてみてください◎
皆様のお越しをお待ちしております!

利用者投稿

前の記事

会社の看板
利用者投稿

次の記事

ロゴ刺繍